時代を超え「書く・描く」の楽しさ伝える。子どもに夢を与えるまちの文具店

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読み書きのデジタル化が進む一方、決して手放すことはできない文房具。イコマサウスモールの「文具のいなもり」は、前身の紙店から数えてまもなく創業70周年を迎えます。2代目の稲森政一代表は時代の流れと向き合いつつ、ニーズに合わせて売り場を展開。ぬり絵コンテストも開催するなど、地域住民に喜ばれる店づくりを前進させています。

〈店舗情報〉
文具のいなもり
奈良県生駒市元町1-3-19
☎︎ 0743-75-2808
営業時間
9:00 – 20:00
定休日:日
Instagram @bungu_inamori


2025年2月25日時点の情報です

「まちいちばんの品ぞろえ」を目指して

いなもりは文房具や印鑑、オフィス用品を中心に幅広い雑貨を取りそろえています。2019年には売り場の大規模リニューアルを実施。売り場面積を広げて什器を入れ替え、さらに品ぞろえも見直しました。その際、最も重視したのは「お客様に合わせた店づくり」。顧客の中心である小中学生やその親世代が必要としているものを充実させています。

「文房四宝って知っていますか?」と稲森さん。中国の唐代に生まれた言葉で、書を究める人々が大切にしてきた筆・墨・硯(すずり)・紙の4つの道具を指します。「現在の文房具の根源といえる存在です。学校でもタブレットを使う時代になり、文房具は必需品から趣味の品に変わってきた部分もありますが、取り扱う商品のルーツを大切にしながら品ぞろえを良くしていきたいんです」と教えてくれました。

目指すのは「まちいちばんの品ぞろえ」。例えば同じサイズ・規格のノートも、デザインや紙の材質が異なる商品を多数用意し、お客さんに選ぶ楽しみを提供しています。手に取りやすいものを充実させる一方、高級筆記具コーナーも設け、ビジネスマンの期待にも応えます。

イラストレーターとのコラボが生んだ夢

かわいらしいイラストをあしらったオリジナルの包装紙は、買い物客の間ではお馴染みのいなもり名物です。イラストレーターのごとうあやさん(@gotoayas)とコラボし、文房具をモチーフにした絵柄を制作。これまでに5種類を発表しました。実はごとうさんは、かつてノートメーカーの営業担当として働いており、当時のお仕事がきっかけで知り合ったそうです。

数年に1度のペースで開催している「ぬり絵コンテスト」の題材イラストも、ごとうさんに作成を依頼しています。コンテストを始めたのは、稲森さん自身が包装紙に色を塗ってみたときに「想像していた以上にワクワクした」からだそう。「みんなにも味わってもらいたい!」と企画しました。

コンテストには1歳から高齢の方まで、毎回幅広い応募があるそう。作品が店内に展示されると、参加者やその家族が続々と訪れ、笑顔の花が咲きます。中にはなんと、コンテストをきっかけに、美術分野への進学を決めた人もいるそうです。

まちの文具店として。時代の中で守る思い

色とりどりの文房具と同様、店内で目を惹くのが「駄菓子屋いなちゃん」のコーナー。「小遣いで買い物することは楽しいし、学びの機会にもなる」としつつ、実は稲森さん自身が幼い頃に抱いた、駄菓子屋への憧れを形にしたものでもあります。近くには学習塾も複数あることから、小腹をすかせた学生たちの心もキャッチ。昔懐かしい駄菓子に、思わず足を止めてしまう大人の姿も見られます。

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さらに、同じ生駒市で製造され、幻の逸品としても知られる「レインボーラムネ」も販売しています。爽やかな甘酸っぱさと独自製法による歯ごたえで大人気のラムネは、生産量が少なく、取扱店もわずか数カ所という珍品で、市のふるさと納税の返礼品にも採用されています。互いの仕事観に共鳴した製造元の協力を得て、数量を限定して販売しています。

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暮らしやすい、子育てがしやすい地域として語られることが多い生駒ですが、やはり事業を受け継いだ頃と比べると、活気の落ち込みは感じるという稲森さん。それでも「まちの文具店」という在り方にこだわりたいといいます。「今や量販店、ネットと、文具店以外でも文房具を買うことはできます。でも大好きなまちで、顔の見えるお店としてやっていきたいんです」と目を細めていました。

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