“こんにちは”がまちをひらく

地域の情報

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初夏の日差しのなか、光明中学校の生徒たちが南口のまちを歩きました。職業体験の一環としてこのエリアを訪れた彼らは、地図にも載らない「まちの温度」を、ひとつひとつ丁寧に感じ取っていきました。


最初に訪れたのは、駅近くの婦人服屋さん。
色とりどりの洋服が並ぶお店のなかで、店主が生徒たちをふんわりと迎え入れてくれました。
服の素材や季節ごとのコーディネートについて話す姿には、長年お店を営んできた誇りと愛情がにじんでいました。
生徒たちの緊張もすぐにほどけたようで、「服にも人を元気にする力があるんだ」と話していたのが印象的でした。
次に立ち寄ったクレープ屋さんでは、甘い香りに誘われるように生徒たちが足を止めました。
注文が入ってから生地を焼き始めるお店で、手際よくクレープが仕上がっていく様子に、思わず見入る生徒たち。
そんな様子を見た店主の方が、ひと口サイズに切ったクレープを「よかったらどうぞ」と差し出してくれました。
ほんのりバターの香りと砂糖の甘さが口に広がった瞬間、生徒たちの顔に驚きと喜びがにじみます。
その後も、焼き加減や使う粉のこと、地元の人たちとのやりとりなど、ていねいに教えてくださいました。
「味だけじゃなくて、“気持ち”まで伝わってくるクレープだった」と、生徒のノートにはそう綴られていました。
そして、通りに長年佇む和菓子屋さん。
ガラスケースに並ぶお饅頭の美しさに、生徒たちはしばらく言葉を忘れていたようでした。
「色や形で季節を表現するのが和菓子の魅力」と、店主の方がゆっくり語ってくれました。
一見地味にも思える和菓子に、こんなにも奥深い世界があると知って、目を輝かせる生徒の姿がそこにありました。
そのほかにも、写真を“思い出”として丁寧に扱う写真屋さん、店先の野菜ひとつひとつに声をかけるような八百屋さん、旬の果物を勧めながら、食べごろの見分け方まで教えてくれるくだもの屋さん、小さなガラスケースに世界観を詰め込んだアクセサリー屋さん。
どの場所にも、その場所らしい“空気”と、それをつくる“人”がいました。
共通していたのは、どの店主も、生徒たちの訪問をあたたかく迎えてくださったこと。
きっと忙しい日常のなかでの突然の来訪にもかかわらず、笑顔で話しかけ、真剣なまなざしに応えてくれるその姿に、まちのやさしさがあふれていました。
「こんにちは」と声をかければ、「よう来てくれたね」と返ってくる。
そのやりとりの中に、まちが確かに“生きている”と感じた体験だったと思います。
南口は、まだ発展の途中にあるまちです。
でも、だからこそ、人の姿がよく見えて、想いの重なりが感じられる。
地元の中学生が見つけてくれたこの“まちの輪郭”を、ぜひ一度、あなたの目でも確かめに来てください。
小さな「こんにちは」が、まちとの扉を開いてくれるかもしれません。

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