生駒駅南口のチャレンジショップ「サクラサク」
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生駒駅南口から歩いてすぐ。かつて誰かの生活があり、やがて主を失った古民家が、いま新たな命を宿そうとしています。 生駒に誕生した宿泊施設「STAYCY(ステイシー)」。 その名には「Stay(とどまる)」と「Cycle(循環)」の想いが込められています。単に泊まるだけの場所ではなく、ここを拠点に何かが巡り始める。そんな場所を目指して、プロジェクトは始動しました。
STAYCYを立ち上げた山本さんは、異色のキャリアの持ち主です。 高校時代のスケートボードへの熱中、アパレルやウェブ制作を経て不動産業界へ。スケボー文化で培った「多様な人とのつながりの面白さ」が、今の仕事の軸になっていると山本さんは語ります。
不動産業界で経験を積む中で、山本さんの目に留まったのは【「価値が低い」と切り捨てられてしまう物件たち】でした。
「誰かにとっては価値がなくても、別の人にとっては唯一無二の魅力になるかもしれない」
そう考えた山本さんは、一般的な価値基準では測れない物件と、それを「ほしい」と願う人を結ぶ、架け橋のような活動を始めました。
業務を通じて、山本さんは一つの確信を得ます。
「物件の魅力は、その価値を心から理解してくれる人だけに届けば、それで十分なんだ」と。
そんな折、知人の設計士から紹介されたのが、のちに「STAYCY」となる古民家でした。 生い茂る蔦(つた)に覆われたその姿は、まるで映画『天空の城ラピュタ』の世界に迷い込んだかのよう。一見すれば「再生不能」と敬遠されそうな状態でしたが、山本さんは一目で、そこに流れる空気や庭の佇まいに魅了されてしまいます。

この山本さんの挑戦を、誰よりも近くで理解し、支え続けてきたのが妻の存在でした。異業種からの転身や、採算度外視とも思える古民家再生への情熱。一歩間違えれば「無謀」と捉えられかねない道も、奥様の深い理解と尽力があったからこそ、今日まで歩み続けることができました。山本さんの夢を、現実の「運営」という形に落とし込んできたのは、奥様の献身的なサポートだったのです。

「誰もが価値を見出せない場所から、新しい価値を生み出したい」
今度は山本夫妻が、その物件の「一番の理解者」となり、再生プロジェクトを始動させました。
しかし、ここで一つの壁にぶつかります。 プロの経験があれば、自分の思い描く形に作り変えることは難しくありません。けれど、ふと疑念が浮かんだのです。 「わたしたちの手で完成させてしまって、この場所のポテンシャルを最大限に引き出せるのだろうか?」 もっと多くの人が関わることで、想像もしなかった可能性が生まれるのではないか。山本夫妻の模索が始まりました。
活用方法に悩みながら参加した「生駒チャレンジプロジェクト」。そこで出会ったのが、当時「生駒で民泊をやってみたい」と語っていた大学生の田宮さんでした。
「実は、宿泊そのものが目的ではなかったんです」と田宮さんは振り返ります。

プロジェクトに参加した当初、掲げていたのは宿泊企画でしたが、それはあくまで一つの手段。彼女が本当にやりたかったのは「人と人とを繋ぐ場所」を作ることでした。
山本夫妻に声をかけられた時、最初は「宿泊が主体でやりたいわけではないから申し訳ないな……」と戸惑い、恐縮したと言います。しかし、対話を重ねる中で、山本夫妻が目指す「人が繋がり、何かが生まれる場所」というビジョンが田宮さんのビジョンに完全に一致していることに気づき、その想いは強い共感へと変わりました。
「この人と一緒に、この場所を育てたい」
直感に導かれるように山本夫妻が声をかけ、田宮さんと山本夫妻の出会いが「STAYCY」を宿泊施設として動かす大きな原動力となったのです。
「STAYCY」という名前は、山本夫妻が丁寧に考えた言葉です。【STAY】と【Cycle】をあわせた造語です。「ここにとどまってほしい、そしてここで何かが循環してほしい」。人が来て、また来て、地域の中で価値が回り続ける場所にしたいという願いが込められました。
例えば、宿泊者が近所の商店街でお惣菜を買い、宿のキッチンで地元の味を楽しむ。あるいは、宿で開催される小さなイベントをきっかけに、地域外の人が生駒のファンになり、やがて移住を考える。そんな、地域の内と外が混ざり合い、新しい価値や経済が巡り続ける風景を三人は描いています。
その想いは、早くも地域に届き始めています。 プレオープン時の内覧会では、SNSや近隣へのチラシという限られた告知だったにもかかわらず、近所のおばちゃんから若者まで、世代を超えた多くの地域住民が足を運んでくれました。 「想像以上の反応に驚きました」と話す田宮さんの笑顔が、この場所への期待値を物語っています。

STAYCYが目指すのは、単なる宿泊施設ではありません。 マルシェやイベント、発信を通じて、新しい一歩を踏み出したい人が自然と集まる「人とまちの循環拠点」です。
「収益以上に、地域のためにできることを追求したい」 そう語る山本さんの隣には、いつも運営の屋台骨を支える奥様の姿があります。夫婦二人三脚で育む温かなおもてなしと、田宮さんのような若い世代の挑戦が交差するこの場所は、これから生駒のまちに新しい風を送り込んでいくことでしょう。

| 〈店舗情報〉 STAYCY 奈良県生駒市本町11−36 Instagram @stacy.2951 2026年3月18日時点の情報です |
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