伝統とモダンが融合。だれもが楽しめる安心の和菓子を
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生駒駅南口を降りて宝山寺に向かう道、通称「参道筋」をあるくと見えてくるレトロな和菓子屋「幾世屋(いくよや)」。お店の前を通ると初めて目に入るのが「宝゛多餅」。4代目店主・堀内由加里さんの祖父が考案した、とんちのきいた看板が印象的な名物和菓子です。
〈店舗情報〉 店舗名:幾世屋 営業時間:平日 9:00-18:00 日曜 10:00-17:00 定休日:水曜日(木曜不定休) 2024年11月28日時点の情報です |
幾世屋の名物和菓子はここから生まれた
堀内さんの祖父が二代目だったころ、宝山寺の参道筋にあった建物を購入し営業を始めた幾世屋。その縁から、宝山寺の「宝=ほう」を「ぼ」と読んで‘ぼたもち‘を「宝゛多餅」と名付けました。
宝゛多餅という名前の他にも驚きなのが、サイズが大きいのにさっぱりと食べられるということ。ずばり、その秘密を聞いてみました。
宝゛多餅のあんには砂糖が入っているものの、中の餅米には砂糖を入れていないそう。さらに二代目から佐賀県のヒヨク米を使っており、そのこだわりは代々受け継がれています。甘さが控えめかつ素材にこだわることが、いくらでも食べられるような美味しさの秘訣だったんですね。
次にいただいたのは「いちじくの蒸し羊羹」。蒸し羊羹という和菓子のレシピは、堀内さんの祖父の代からありました。そうした歴史のある和菓子に、堀内さんのフルーツを入れるというアイディアが融合。いちじくは季節性の強いフルーツだったため、はじめは季節限定の商品でした。
しかしあまりにも美味しいので通年で食べられたら、という声がお店の中からも常連さんからも生まれます。ドライフルーツとつぶあんの食感を両方楽しめるよう何度も改良を重ねた結果、人気商品となり今ではいつでも購入できます。
菓銘で深まる和菓子の季節感
菊や紅葉など伝統的意匠の和菓子は引き継ぎながらも、新しい和菓子が生まれ続ける幾世屋。それには堀内さんが学生の頃に卒論で「菓銘」について研究した経験が大きくかかわっています。
「和菓子は目で見て、音(菓銘)を楽しみ、最後に食べるという3段階で味わうもの。」と教えてくれました。
季節の生菓子というものは1年中同じ味ですが、季節に合わせて形や菓銘が変わる楽しみがあります。取材をおこなった11月上旬の菓銘は「奥山」。
「奥山に 紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき」という和歌から、紅葉を踏みわける鹿の情景が思い浮かびこの意匠が生まれたそう。
ようじを使って開けてみると、白あんが出てきたりこしあんが出てきたり。意匠だけでなく色の繊細なこだわりも和菓子の楽しみたいポイントです。「奥山」はこしあんで周りを色づけており、あえて中は白あんにしたそうです。
誰でも美味しく食べられる和菓子のために
歴史ある和菓子屋に生まれた堀内さん。幼いころから和菓子に囲まれた生活だったものの、実は白砂糖や添加物に対して(身体に反応がある)アレルギーがあったため和菓子を食べられなかったのだとか。そのため「幾世屋の和菓子は誰でも食べやすいものになるように」と、4代目店主になってからは材料を大幅に変更して白砂糖や添加物を少なくしました。
あずきの良さを出せるギリギリの美味しさに粗糖の量を調整。あんのレシピは日々進化を遂げています。
幾世屋が生駒にお店を開いて100年ほどが経った2010年、当時の建物の天井や窓はそのままに現代的な改修工事を実施しました。改修の際に新たにカフェを併設。
その日の気分で選んだ和菓子とお茶を、お庭の景色に癒されながらいただきます。
まさに「和菓子は肉体的には必ずしも必要なものではない、しかし精神的には必要」という堀内さんの言葉が体現された場所です。そして2代目の「生駒という地元に愛されたい。そのためには店主の目が光るところでしか営業してはいけない。」という教えは今も受け継がれ、多店舗展開の予定はないそうです。この味と雰囲気を味わいたいなら、こちらに訪れるしかありません。
おはぎとだんごは、月に2回のお楽しみ
幾世屋の名物行事といえば、毎月10日の「おはぎの日」と毎月第4土曜日の「だんごの日」。
おはぎは全部で8種類並び、だんごは手ごねでつくられる月に1度ずつのイベントです。
「和菓子に対してマナーや堅苦しさを感じている人に、もっと気軽に足を運んでほしい。」という堀内さんの思いから生まれたこのイベントを、楽しみにしている人がたくさんいます。
リピーターの皆さんも初めて幾世屋で和菓子を買う皆さんも、ぜひこの2日間をねらって訪れてみてください。
*どちらのイベントも定休日に重なる場合は、翌日に開催されます。
〈店舗情報〉 店舗名:幾世屋 営業時間:平日 9:00-18:00 日曜 10:00-17:00 定休日:水曜日(木曜不定休) 2024年11月28日時点の情報です |
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