駄菓子屋を抜けた先に酒場あり。色とりどりの料理とワインを楽しむ社交場

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生駒駅のすぐ南、イコマサウスモールの一角に2024年1月、チョコレート専門店「Many Cacaos, Many Minds.」(以下、MCMM)が誕生しました。
カカオ豆からチョコレートができるまでの全ての工程を自社で一貫する「ビーントゥバー(BEAN to BAR)」というスタイルを採用。製造にはさまざまな特性を持つスタッフが携わっており、新しい障がい者雇用の形を切り開いています。
〈店舗情報〉 メニーカカオズ メニーマインズ 奈良県生駒市元町1-3-4 ☎︎ 0743-61-5792 営業時間 8:30 – 18:00 定休日:月 Instagram @manycacaosmanyminds 2025年7月30日時点の情報です |
ビーントゥバーは、製造する人のこだわりや思想が色濃く反映される取り組みといわれ、世界のチョコレート業界の新潮流として注目されています。MCMMでは現在、ブラジル、インド、コスタリカ、ウガンダ、ハイチ、フィリピンの6産地のカカオを使用しています。カカオの含有量も「ミルクチョコ」「70%」「90%」の3段階があり、店内では全て試食可能。好みやシーンに合わせて組み合わせを選べます。
「産地ごとに個性があるので、それを体験して楽しんでもらいたいです」と話すのは、MCMMを手がける「HIRAKUホールディングス株式会社」の中岡崇代表。経営コンサルタントを経て独立し、福祉に関わる事業に取り組んでいます。
店頭では高品質なチョコレートをふんだんに使ったスイーツも販売しており、店内飲食も楽しめます。中でもガトーショコラはしっとりとした口当たりと、濃厚な味わいが人気の一品。ブラジル産カカオのチョコを使用し、シンプルな製法でその味と香りを生かしています。中岡さんは「ブラジルのチョコレートは単体だとハーブ感が強く、好みが分かれるのですが、ガトーショコラに使うとそれが深みに変わるという発見があったんです」と解説。さらなるおいしさを探求し続けています。
機械化が一般的となった現代にあって、あえて手作業を取り入れるMCMM。特に重要なのが、破砕したカカオの実と皮を手で分ける工程です。機械に通すだけでは完璧を目指すことが難しく、最後は人の目で見て手で仕分けることで、カカオが持つ香りや味わいがよりピュアに引き出された「高精度なチョコ」になるといいます。
新事業にチョコレートショップを選んだ理由について、中岡さんは「お菓子業界は大手企業が強力ですし、こと奈良を見ても有名な洋菓子店さんも多い。しかし人の手が関わることが持つ力、クラフトマンシップを打ち出せば、みなさんに喜ばれるものが作れると考えました」と語ります。
またMCMMでは、障がい者の職業選択の拡大にも取り組んでいます。系列施設の希望者から採用したスタッフは、その特性も踏まえつつチョコレート作りのあらゆる工程を担当します。
「人目を避けることを前提とした雇用のあり方に、疑問があった。オープンキッチンで活躍する姿は、これまでのイメージを変えてくれるはず」と中岡さん。障がい者の方々がお客さんの目の前で調理する“表舞台”を整え、これまでになかった選択肢を創出しています。
店名は、十人十色を意味することわざ「Many men, many minds.」が由来。ロゴは1文字ごとに書体が異なります。カカオだけでなく、人もそれぞれの個性を発揮してこそ良いものを作れる、という意味を形にしました。
オープンから1年。最近は東京、大阪での催事出店にも積極的に取り組み、短期間でリピーターを獲得するなど確かな手応えを得たようです。中岡さんは「まだまだ試行錯誤の連続ですが、どこに出しても恥ずかしくないクオリティになっていると思えた」と自信をにじませました。
今後はバー営業を本格化させ、ソムリエと編み出したお酒との組み合わせを提案していく構えです。「生駒には、チャレンジを受容してくれるオープンな雰囲気がある。このまちを拠点に、新しい挑戦を続けていきたいです」と力を込めました。
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