生駒の古き良き姿を伝え続ける!知る人ぞ知るおだし屋さん

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みなさんは「質屋」と聞いてどのようなイメージを抱きますか? 名前は知っているけれど、その内側は想像もできない……という人が多いのではないでしょうか。宝山寺参道とぴっくり通り商店街の間、かつての生駒の風情が残る通りにある質屋「くろねこ」は大正12年に創業。地域に根ざし、経営を続けています。今回は知られざる業態だけでなく、老舗の視点から見つめる街の変化について話をうかがいました。
〈店舗情報〉 くろねこ 奈良県生駒市元町1-8-19 ☎︎ 0743-73-2206 営業時間 9:00~19:00 定休日:日・祝 2025年2月25日時点の情報です |
堅牢な土蔵を思わせる和風建築が印象的なくろねこ。出迎えてくれた3代目の山本義人代表は、この道一筋45年というベテランです。まずは質屋の仕組みについて教えてもらいました。
質屋の利用方法は大きく分けると「質預け」と「買い取り」の2通り。持ち込んだ品物の価値を割り出すのは同じですが、質預けは預け主、つまりお客さんに品物を返却することを前提としたシステムです。品物の価値に応じて融資を受け、原則3ヶ月の期限内に元金と質料(利息)を支払えば、再びその品物が手元に戻ってきます。
取り扱う商品は宝石や貴金属、時計、高級バッグ、カメラまで多岐にわたります。山本さんによると、かつては呉服を預かることが多かったそうですが、最近その機会はめっきり減ったそうです。
幅広いジャンルの、しかも高価なものを扱うため、必要とされる知識量も膨大になります。山本さんは先代である父親の計らいで、大阪の古物商で5年ほど修行したのち、家業に入りました。それ以降も、ブランド品などあらゆる製品や技術について研究、情報収集をしながら目利きの能力を磨いてきました。
そんなお店を営む上で、大切にしていることは? と問うと「質屋は信頼ありき」と山本さん。質屋を訪ねてくる人は、それぞれ事情こそ異なりますが、現金を必要としている人が少なくありません。的確な査定をすることは、利用者の暮らしに貢献することになるのだといいます。
また山本さんは、取り扱い商品の幅広さ、正しい目利きと同等に、査定の速さにもこだわっているのだそう。「店に滞在する時間をできるだけ短くすることが、お客さんのストレスを軽くすることにつながります。経験を積んできたからこそ実現できるサービスです」と説きます。
さらに、女性や初めての人、査定のみの人でも依頼しやすい雰囲気づくりにも気を配っています。「買い取りだけを行う業態とは、お客さんと付き合う時間の長さが違うぶん、安心してもらうことが大切なんです」と強調しました。
くろねこは実に100年以上の歴史があり、山本さんご自身も人生の大半を生駒で過ごしてきました。「若いころは門前町ならではの活気があったけど、すっかり景観が変わってしまったと顕著に感じる。特に夜間人口が減って寂しいですね」と移ろいを憂いつつ、近年は変化の予兆も感じているようです。
特に注目しているのが、アンケート調査などで知った若者との意識のギャップです。「年配ほど『新しいものを作らないと』と考える傾向があります。しかし意外にも、今の駅前の風情を気に入っているという若い人も多いんです。実際に、若いお店もぽつぽつ増えてきました」と話し、近隣の新規出店や事業承継を見守っています。
山本さんは若者だけでなく、外部の発想を取り入れることも発展に欠かせないと念押しします。築120年以上ともいわれる自店をはじめ、地域のあらゆる資産の活用の可能性も探っているそうです。「この街が好きだし、長く商売させてもらってきた。その火を灯し続けられるなら、喜んで橋渡し役になります」と街への思いを語りました。
〈店舗情報〉 くろねこ 奈良県生駒市元町1-8-19 ☎︎ 0743-73-2206 営業時間 9:00~19:00 定休日:日・祝 2025年2月25日時点の情報です |
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